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めし帳

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2011年 03月 17日

無題

相変わらず余震の震度が大きいものが多く 夜は床に横になるのが
怖い。眠りにつきはじめウトウトし始めると緊急地震速報が入り
縦長の住んでいる建物が揺れる。その都度起きては ついでに携帯電話の
待ち受け画面に流れるニュースをチェック。テレビを付けていない間に
何か重大な事が起きていないか それが気になって仕方が無い。

眠りが満足ではないせいか 起きても頭がボンヤリ。食べ物は魚も野菜も
買い置きが無いので 保存食が中心。山のような添加物を栄養と一緒に
私の体から摂取するお腹の子供が不憫。だが食えるだけマシなのだ。
死なないだけマシなのだと言い聞かせる。私の住む県も 車で少し行った
海岸辺りは大津波の被害に遭い 内陸のこのエリアも 家がそこかしこ
壊れている。相変わらずガソリンも灯油も無く 物資も乏しく 原発に
近いのでいつ避難命令が出されるか分からない。しかし報道は一切されない。
何もかもが中途半端だ。半端に壊れ 半端に物の無い地域は どこからも
助けの手は伸びず “被害に遭った側である”とは見なされない。

病院の薬がもう無くなりかけている。薬は本来飲んではならないが 喘息は
妊娠中でも発作が起こると呼吸困難を引き起こし それが胎児への酸素供給を
妨げ胎児に障害を起こすので 母体の呼吸困難を考慮する為に やむなく
薬を服用・吸引の指示が出る。けれど無い。

一人ぼっちの暖房も無い部屋で 毎日同じ事をする。水が出るか確認し
バケツや鍋に溜めている水を取り換える。三日に一度洗濯機を回す。
洗濯機が回せる事すらも 今は有難いと痛感する。お腹はここ最近になり
一層出てきた。太った体なので分かりにくいが それでもはっきりと
ボールが入っているような出方をしてきた。室内干ししていた洗濯物を
取り込んでたたみながらお腹を撫でて 今日はふと「頑張ろうな」と
一言声を掛けた。

私は妊娠してからも ハッピーな気分になった事は一度も無い。別段ネガティブ
な事ばかりしか考えられなかったわけではなく 他の妊婦さんのブログの言葉
のように“ベビたんできまちたぁ♪(>▽<)超超ハッピィですぅ”という気分
にならなかったのだ。母親にならねばならないという覚悟と 無事に生まれる事
を願う事はしていたが めくるめくバラ色の日々では無い。実に 実に冷静
だったように思う。なのでお腹に話し掛けるという行動も極度に無かった。
しかし今日は なぜだか妙に話し掛けてみたい気分になった。

胎動などはまだ感じない。でも一人では無いのだと思える事は その一人を
守らねばならない不安と同時に 僅かな安堵も与えてくれる。その他に
飼い猫の存在も 今は殊更力となっている。我が家の猫は完全室内飼育。
だが震災直後 換気の為に開けていた窓から飛びだし 二匹のうち一匹は
逃げ出してしまった。毎日玄関に靴を挟み開けておき 玄関に夫の匂いの
ついたトレーナー・餌・水を置いておく事で二日目に戻って来た。
以降は窓という窓を施錠している。

そのオテンバ娘は 私より夫に懐いてる。でもその夫の姿が連日無いので
今は甘えたい時には私のところに来る。こいつめと思いながらも 足元に
すり寄って来る姿はたまらない。猫の柔らかい毛並みが心を休めてくれる。
同時にお腹の子もこの猫も 自分が居なければ簡単に死んでしまう存在
だと実感し心細くもなる。が 嘆くのは 自分の“ノート”である この
ブログの中だけ。周りには決して言うまい。子供も猫も私の味方になって
くれるが 私を育ててくれた家族の比ではなく 姉・父母に心配は
掛けられない。

ただ 今は実家に行くのが苦痛でもある。母の愛情は私の一挙手一投足から
日々の暮らし 自宅の家具の位置の果てにまで及び 一個一個のお小言と
なって降り注ぐ。その愛の雨は 精神を病みかけた私にとっては攻撃にも
等しい。朝目覚めた瞬間から寝るまで「これはあんたの持つ業のせいだ」
「あんたのここを直さないといけない」「あんたのこれはこうしないと」
を聞き続けていたら 今の私は発狂する。母の愛情にも色々あり 娘が
ふさいでいたら あえて声をうるさく掛けずに見守る母もあれば そうでは
ない母もいる。私の母は間違いなく激情型である。娘がふさいでいたら
頭に血が上る。愛情がおせっかいとなり やがて激しい感情の波を起こし
「おまえのここがこうだから 直さないからこんな事になるんだ!!」と
娘に対してどんどん興奮する。これは一番堪える。何が堪えるって 母の
言葉の根底にあるのは“愛”だからだ。決して憎いから言っていない
けれど愛が憎しみに変わり 興奮しながら機関銃のような口で娘を攻撃
し続ける。夫がそんな部署で働かねばならない事も この時期にお腹に
子供を授かった事も 前の一度の妊娠後の流産も みんなみんな 全て
私の行いが悪いから 私が真面目に生きていないからだと言う。

分かったよ でもやめてよ もう 頼むから。

だが昨日は 生まれて初めてその小言がピタッと途中で止まった。
私は昨日 一旦家に帰る際 自分が実家に来た理由が分からなくなり
思わず上着を着ながら「私どうして今日はここに来たんだろう」と呟いて
しまった。少しして思い出す。猫の餌を買う為に 食糧を買い物に行く
父の車に便乗し ついでに実家に来たのだ。だが昨日はそれを思い出す
事が出来ず 一瞬自分が実家に居る理由が分からなかった。その様子を
見て 母は初めて小言を止めた。さすがにおかしな言動を目の当たりに
すれば 母の口も止まるって事か(笑 でももうそんな姿は見せたくない。
ただでさえ心配性の母なので もう一度そんな姿を見せたら 精神科に
引きずり引っ張って行かれ 入院させられかねないから(笑

あたたかい食事を出してくれる事も愛情を注いでくれる事も有難い。
たまらなく有難い。でもやっぱり お小言はどうか夫が無事に帰れるように
なり 精神が安定してからにして欲しい。
だから今日も 実家に行くのをやめたい。やめた方がいい。

その夫は今 倒壊しかけた社屋に詰めっぱなしで帰らない。一日分の給油を
したけれど・・・今は宝石より価値のある燃料を 少しでも減らさないように
帰宅を見送る事もある。同僚の家は近い人がほとんどだが 断水したままの
家もあり 家族が震災で大怪我を負った人もおり 親兄弟の安否が不明な人
もいる。それでも全員泣き言は言わず 連日仕事に明け暮れている。自身が
怪我を負い 腕にも足にも包帯を巻いて業務にあたっている人もいる。
自分たちとて被災者である。しかし市や街の復興と円滑な市民生活の復旧
の為にこそ自分たちがいるのだ それこそが仕事だと歯を食いしばる。
しかし市民はそれを理解はしない。相変わらず鬱憤のはけ口になっているせいで
本当に困った市民からの問い合わせに答える事も 業務にも支障が出ている。
15人で一万人の人の声を聞き 政府・東電 その他各所から入る情報を管理
し伝達し その合間に溜まっている仕事をこなしている。

今回の事で強く感じた事がある。夫と私は結婚九年になるが子供がおらず
ずっと友達のままのような感覚で過ごしてきた。時には夫と妻という感覚すら
無く 出会った頃 りむちゃん・いっちゃんと呼び合っていた友達の頃の
ままだった。でも今は違う。夫はすでに私の体の一部だ。戸籍上の結びつき
でしかないのに 家族であると強く感じる。

私も容姿が悪いが夫も容姿が悪い。夫は太っていて色白で田舎特有の訛りが
残る話し方で 家族の中でさえ馬鹿にされる。直接言わず 陰で言う事も
あれば面等向かって私に言う事も。今まではそれを腹の中でムッとしながら
も気にしないできたが 今は殺意すら感じる。震災後ですら 母は被災者の中で
太った男性が映ると「Kちゃんみたい」と笑って指をさす。だからなんだよ
テレビに映るこの人だって被災者なのに なぜ笑えるんだと睨みたいが 母は
元来そういう人だし 今は喧嘩するエネルギーは絶対に使いたくないので 
言い返さない。その代わり私のストレスは増加する。

訛っていたからなんだ 大人しく人に言い返せない性格だからなんだ
太っているからなんだ 真面目に遊びの一つもせず 懸命に働き安月給を
コツコツと私に運んでくれ あんたらの娘を大事にしてくれる
これ以上の事があるか!!

今までは恥ずかしくて言う事なんて無かった。でも今は言える。私はあの人
の事が大好きだ。人に何を言われても 自分はその人の悪口は絶対に
言わない あの人の事が大好きだ。だから一刻も早く激務を終えて 自分と
お腹の子のもとに帰って欲しい。

震災があろうが無かろうが 世界の夫婦がそうだろう。自分の伴侶は最高だ。
私もそう思える。普段から思ってる でも今は尚更。

いろんな思いと不安が押し寄せて 一人で洗濯機の前でしゃがみ込んで
しばらく長い間 泣いた。実家では泣く事も許されないので やっぱり今は
自宅の方がいい。

by rim27 | 2011-03-17 09:37


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